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東洋はりの診察方法4-脉診のお話その3

脉を見て何がわかるの?

皆さん、こんにちは。今回からは、鍼をさす時に大切となる脉診についてお話しさせていただきます。さあ、27枚目の扉を開けてみてください。

脉診は、大きく、比較脉診と脈状診との二つで構成されています。先回までは証決定に最も関係する比較脉診についてご紹介させていただきました。今回からは、もう一つの柱である脉状診に話を進めていきたいと思います。

脉状診とは、脉の状態を観察して、刺診、刺鍼の主義手法を決定するものとされています。

脉は体の中で最もその人の体の状態を表すところであり、病気や症状の程度を知ることができます。われわれ経絡治療においては、経絡の「気」を調整することが治療目標になりますが、脉の状態を診ることによってその「気」の状態を把握することができます。

この「気」を把握するのに最も適しているのが脉状診ということになります。しかし、脉状診と一言で言ってもいろいろな角度から見ることができるので、少しそちらのお話をさせていただきます。

脉状が、浮いている、沈んでいる、脉状が速い、遅い、脉状が実している、虚しているなど、これらの6項目を観察することを6祖脉と呼んでいます。

  • 浮脉とは、風邪によって浮いている脉状で、刺鍼においては浅く鍼をします。
  • 沈とは、慢性的なものによる沈んでいる脉状で、刺鍼においてはやや深めにさします。
  • 遅い速いとは、寒熱を目標に観察する方法で、遅とは、一呼吸に3動以下のものをいい、冷えを表す脉状で、その刺鍼は徐にし、ときには置き鍼もします。
  • 数(さく)とは、一呼吸に5動以上打つ脉状で、熱を表し、速刺速抜を基本とします。古典には、「暑熱を刺すは手にて湯を探るがごとく、寒性を刺すは人の行くことを欲せざるがごとし」と書いてあります。
  • 虚実とは、脉の強いか弱いかによって正気と邪気を観察するものであります。

実際の治療においては、患者さんの脉状がこのようにはっきり大別出来ないもののほうが多くて複雑になっていますが、大きな柱としてはこの6祖脉が脉状診の基本となっています。

もう少しわかりやすくお話ししますと、例えば浮いていて速い脉が触れた場合には、症状は表のほうにあってつまり、痛みの場所がはっきりと自覚出来るようなばあいとか、首から頭にかけての症状があるなどのときに現れます。

速い遅いということは、先ほども書きましたが、熱があれば速くなり、冷えていれば遅くなります。発熱をしているときなどは、この浮いていて速いということになりますね。

沈んでいて遅い脉が触れたとしますと、病気になってから古い経過をたどっていて、手足が冷たく、便通などもあまり良くないという症状のときに現れてきます。

五十肩や腰痛、慢性的な神経痛などではこのような脉を打つことが多くなります。

次回以降お話ししていきますが、体質やその人の固有の脉というものもあり、単純に症状がそのようなものであったとしても、先ほどの脉状を打つとは限らないので、われわれ鍼灸家は、大変迷わせられています。

今回はこの辺でお話を終わりとさせていただきます。