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スポーツ障害の治療

はり灸治療とスポーツ障害

スポーツ障害による痛みや腫れ、体のメンテナンスに鍼治療を取り入れると効果的に体調管理ができたりします。

ここでは、スポーツ障害の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例:患者 女性 20歳

来院時の状態:
左膝の痛み、今までの経過としては、子供の頃からバトミントンをしていて、左右の膝を痛め、靭帯損傷の既往もあるとのことでした。他には右肩関節の痛み、走ったときの腿の付根の違和感などがありました。
体の状態は、皮膚は薄くきめがこまかい、手足が冷たい、左膝内側の腫脹、右肩関節部の筋緊張こりがありました。
腹部は全体的に冷たく、上腹が特に力がない。脈を見ますと、浮いていて遅く弱い。
(スポーツ選手では、長年のトレーニングによっていわゆるスポーツ心臓となり、心臓の壁が厚くなっているため、一般の人よりも脈拍は遅くなっている人が多い)となっていました。
治療方針(証)
肺/肝相剋調整という証を立て、手足のつぼに鍼をした後、頚/肩/背中に鍼。左膝脹れている部分の周囲に温灸を行ないました。
大会が頻繁にあり、その都度のメンテナンスを重要視して、続けてもらうことにしました。

練習が終わってから来院することが多くて、動作中の痛みはその都度あるようでしたが、初めは毎日行ない、試合をはさんでからは、週に2回程度の治療を1ヶ月あまり続けたところ、改善されました。

その後も2年余り通院され、元気に現役選手を続けることが出来たようです。


2例:患者 女性 高校1年生

来院時の状態:
右かかとの痛み。今までの経過としては、陸上をやっていて、ロングジャンプの選手であり、助走時や着地時にかかとに痛みがあるとのことでした。
既往としては左シンスプリント(左足の内側に症状が起こるもの)がありました。腹は全体的にやや硬め。脈をみますと、浮いていて、遅く弱い。
治療方針(証):
1回目は肺虚肝実証という証を立て、手足のつぼに鍼をした後、頚/背中に鍼。右かかとにたいしては知熱灸、左足のシンスプリントに対してテーピングを行ないました。

治療としては、わりと最近の症状でしたし、大会が近いということで続けて治療をしてもらいました。

三日続けて治療したところ、かかとの痛みは消失しましたので、ねんの為もう1度来院してもらって、完治としました。


3例:患者 男性 高校1年生

来院時の状態:
腰痛。今までの経過としては、野球部で今は外野守であるが控えのピッチャーでもある。最近走ったり、バットを振ったときなどに腰痛があり、思うように動けない。整形外科を受診している。
腹は硬めで上腹部につやがない。脈を見ますと浮いていて速く強い。体の状態は、皮膚はややざらついていて、筋肉は硬め。腰椎が後に反り返っていました。
治療方針(証):
1回目は肺虚肝実証という証を立て、手足のつぼにはりをした後、背中腰に鍼。腰部に知熱灸とテーピングを行ないました。
治療は1週間に2回くらいのペースで通院してもらい、今のうちに治しておいたほうが良いことを説明いたしました。

10回くらい継続していただいて、腰痛はかなり改善されました。その後症状が出てくるたびに来院していただきました。

このようなスポーツ障害でお悩みの方は、お気軽に泉心道鍼院に一度ご相談ください。スポーツ選手の身体のメンテナンスにも鍼灸は役に立ちます。


4例:患者 女性 19歳

来院時の状態:
右手首の痛み。今までの経過として、この患者さんは、小さい頃よりバトミントンをやっていて、今年から社会人となり、練習が激しくなってきて、右手首を傷めたとのことでした。ほかに腰痛、右肩関節痛、生理痛などがありました。
腹はやや冷たく上腹が弱い。脈を見ますと、浮いていて遅く弱い。体の状態は皮膚が湿っていて冷たい。腰椎の後湾変形がありました。
治療方針(証):
治療としては、1例目の患者さん同様、メンテナンスを重要視して、オーバーワークになり過ぎないように気をつけてもらいました。それから、油っぽいものや甘いものを控えてもらい、冷性の改善も一緒に治療をしてもらうことにしました。
1回目は、肺/肝相剋調整という証を立て、手足のつぼにはりをした後、背中腰にはり。右手首にさんしんを行ないました。

数回の治療で手首の痛みは治まり、ラケットを振っても痛くなくなりました。メンテナンスをするように説明しておきましたが、それからは来院が遠のきました。

しかし、次の年からは、2年間定期的に来院され、その都度、現れていた症状に対しても鍼で改善していきました。


5例:患者 男性 高校1年生

来院時の状態:
右膝裏内側の痛み。今までの経過としては、短距離選手であり、最近走ると患部に痛みが出て思いっきり走れない。左腿の後ろ側も痛めたことがあるとのことでした。そのほかの症状は特にありませんでした。
腹は硬め。脈を見ますと浮いていてやや早く、力がある。
体の状態は患部に凝りがあったり、以前痛めたことのある左腿の後ろ側の筋肉に緊張がありましたが、そのほかは健康体であると思われました。
治療方針(証):
1回目の治療は脾虚肝実証という証を立て、手足のつぼにはりをした後、背中/腰にはり。患部にさんしん・温灸を行ないました。

3回続けて治療をしたところ、走っていても痛みが出なくなりましたので、完治としました。その後この年の年末に来院され、そのときも足の痛みがありましたが、2回の治療で完治しています。


6例:患者 男性 高校1年生

来院時の状態:
右股関節の痛み。今までの経過としては、400メートル選手で、最近走っているときや開脚したときなどに右股関節に痛みがある。ふくらはぎも張る感じで重だるい。
腹は硬めで上腹部につやがない。脈を見ますと沈んでいて力がある。
体の状態は、右腿の付根を中心に筋張りと凝りがあるが、後は筋肉質で健康体と思われました。
治療方針(証):
1回目の治療は、脾虚肝実証という証を立て、手足のつぼにはりをした後、患部を中心にはり。右ふくらはぎに対して、さんしん、右りんきゅう、がいかんというつぼにきけい灸を行ないました。

2回目の来院のとき痛みはかなり改善されていて、3回目の治療ではほとんど痛みが消えていましたので完治としました。

このように急性期で初期の段階での治療は2から3回はりをしていただければ、痛みは消失してきますし、慢性的な痛みに対しても、定期的におこなっていけば、筋肉の断裂や靭帯損傷など、起こしにくく、パフォーマンスの向上にも繋がると思われますので、スポーツ「障害」にしないで、「傷害」に留めておくためにもはり治療をお勧めいたします。


7例:患者 女性 26歳 会社員

来院時の状態:
左膝裏側の痛みがもっとも強く、2年くらい前からマラソンを初め、時々大会にも参加しているとのことでした。
そのほかの症状としては、左膝裏にこうけつ。皮膚は湿っぽい。眠れない、腰痛、股関節の痛み、胸焼け、喉口の渇、手足の冷え、頻尿、過食などがありました。
腹部は全体的に弱くて特に上腹部が弱い。脈は沈んでいて弱い。
治療方針(証):
肺虚肝実証という証を立て右太淵・太白に補方。左太中都に瀉法。胃に関係する経絡を調整後、背中から膝裏にかけて鍼。左膝裏に温灸、腹部と左陽陵泉(このつぼは筋肉の病に効果のあるつぼとされている)に温灸をおこないました。
左膝裏の痛みも気にかかるけれど、今一番の悩みは過食であるとのことでしたので、その治療もあわせて行うことにしました。

その後2回ほど同じような治療方針で行い、4回目には楽に走れるようになりました。

4回目より脾虚証に証を換えて行い、過食の治療を中心におこないました。甘いものを控えてもらい、治療は2011年2月現在も行っていますが、足の痛みは出ていません。


8例:患者 男性 16歳

来院時の状態:
腰痛で、サッカーをしていて、一昨日右側の腰を痛めて動くことも困難である。その他の症状としては、自覚症状はないが、手足の異常発汗がありました。
体は筋肉質で脈は浮いていて弱い。
治療方針(証):
肺虚間実証という証を立て、左太淵・太白に補方。右太衝に瀉法。水分を調整する膀胱経を調整後、右腰を中心に鍼と温灸をおこない、右申脈・後谿にきけい灸を行いました。

急性的な症状でありましたので、1日置きに治療をしてもらいました。練習を休まないでの治療でしたので、4回目くらいまでは、症状が取れてきませんでした。

4回目の治療で右腰の患部に円皮鍼というシールのついた鍼を貼って帰宅してもらいました。

5回目より証を肝虚脾実証に換えて行い、腰痛が消失しましたので、念のため2回ほど続けて来院していただき、運動後も痛みが出なくなりましたので、治療を終了といたしました。初めにあった手足の異状発汗もなくなりました。


9例:患者 男性 15歳

来院時の状態:
腰痛で、陸上をやっていて3週間くらい前から腰を前に曲げたときや走ったときなどに右側に痛みがあるとのことでした。
体は筋肉質痩せ型で脈は浮いていて弱い。
治療方針(証):
肺虚肝実証という証を立て、左太淵・太白に補方。右中封に瀉法。全身を調整する三焦経を調整後、右腰を中心に鍼。右申脈・後谿にきけい灸を行いました。

1週間後に試合があるとのことでしたので、間を置かずに通院してもらいました。証は同じできけい灸もそのまま行い、3回目で普通に走れるようになりましたので、治療を終了といたしました。

症例8と9の人は偶然同じ日に初診の来院があったものですが、8の人は痛めてから三日目の来院で、9の人は3週間立ってからの来院でしたので、急性の人のほうが先に治ってくるものと私自身も思っていましたが、3週間立ってからの来院された人の方が3回で完治となったことは、時間の関係と楽になる回数は必ずしも一致しないということを、感じられた症例でした。


用語説明:

証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
きけい治療(灸)
経絡治療の中の一つの治療方法で手と足からそれぞれ一つずつ、つぼを選んで組み合わせ、鍼の材質や灸の数に差をつけることによって、プラスとマイナスの働きを利用したもので、水の流れにたとえると、充満した水を溢れさせないために、排水路に流してあげる目的で行なわれる治療法です。

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