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はり灸治療/自律神経失調症

はり灸で自律神経失調症の治療

自律神経失調症の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例:患者40歳 女性 主婦

来院時の状態:
ムチウチ症の既往があり、腰痛、吐き気、頭痛、頸痛、腰痛がありました。そのほかに、眠れない、やる気が起きない、肝炎、喘息の既往もあり、再発が心配とのことでした。
腹部は力がなく下腹部が冷たい。脈は沈んでいて速く弱い。
治療方針(証)
肝・脾相剋調整という証を立て、曲泉・陰谷・陰陵泉というつぼにそれぞれ補法をおこないました。大腸と胃に関係のある経絡を調整した後、頸背中腰にはりを行い、腰部に温灸をおこなって1回目の治療は終了としました。

5回目位までは症状が変わらず、6回目あたりから日によっては調子の良い日と悪い日が来るようになりました。

脾虚証に証を換えて暫く治療を続け、8回目で主訴の腰痛は良くなってきました。やる気が出てこないときがあると思うと、ハイテーションになって眠れなくなったり、眠れると今度は肝炎の再発が心配になるなどの心の動きがありました。

しかし、来院当初の状態の改善と途中目覚めるが眠れるようになりましたので、家庭の事情もあり、15回の治療で終了といたしました。


2例:患者41歳 女性 オペレーター

来院時の状態:
主な症状としては、体がだるく、全体的に皮膚が冷たい。足先の冷え、倦怠感、日中眠い、便秘と下痢を繰り返す、肩凝り、生理不順、胃がつかえる、咳が多い、胸苦しい、動悸、頻尿、腰痛、落着かないど、不定愁訴がありました。
腹は下腹部が弱く、脈は沈んでいて弱い。体全体が冷えているような感じでした。
治療方針(証):
肝・脾相剋調整という証を立て、右曲泉・陰谷・左陰陵泉というつぼに補方。好転の元気(体力をつけさせる)を高める三焦経を調整しました。
頸肩腰にはりをした後、肝兪・命門というつぼと、足裏に温灸をおこないました。2回目の治療で、先回の治療で頭が重くなったと言われましたので証を脾虚証に換えて、おこないました。4回続けて、少し眠れるようになり、朝起きるのも楽になってきました。

初めの1ヶ月は週に2回来院していただき、その後は、ほぼ1週間に1度の来院を続けてもらいました。既往歴としてひぶん症もありましたが、眼に温灸などを加えながら治療をおこなっていきますと、かなり楽になってきました。

仕事で耳に負担がかかり聞こえが悪いとのことでしたが、それは疲労の度合いで強さが違うようでした。

治療方針は時々肝虚証や腎虚証など変わりながら、生理不順は安定して生理があるようになってきました。肩こり・体の冷えも改善されて23回の治療で終了としました。


3例:患者45歳 男性 調理師

来院時の状態:
皮膚はややこそうぎみ。全体的に熱い。足のむくみ、のぼせ、動悸、めまい、眠れない、頭が重い、鼻がつまる、胸苦しい、手足の冷え、睡眠時無呼吸、肩凝りなどの症状がありました。特に寝るとめまいがする、動悸・のぼせが最近気にかかるとのことでした。
腹は上腹部が冷たく、脈は沈んでいて速く硬い。
治療方針(証):
脾肝相剋調整という証を立て、左太白・大陵・右太衝というつぼに補方をおこないました。好転の元気を調整する三焦経を調整し、頸背中にはりを行った後、足のむくみと眠れるようにするために、質眠というつぼに温灸をおこないました。左皇孫・内関にきけい灸をおこないました。

1回の治療でぐっすり眠れるようになりました。肩こり、のどの詰まる感じは6回目で取れ始め、ふらふらする感じは9回目でほとんどなくなりました。2ヶ月で主な症状は取れましたが、本人がはりをすると調子が良いということで、現在もほぼ1週間に1度の割合で継続されています。

3症例とも、健康な状態に戻ったとはいえませんが、日常生活には不便さを感じなくなる程度には改善されていますので、はり治療が自律神経に大きな影響があることを、知っていただく意味でご紹介いたしました。


用語説明:

証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
きけい治療(灸)
経絡治療の中の一つの治療方法で手と足からそれぞれ一つずつ、つぼを選んで組み合わせ、鍼の材質や灸の数に差をつけることによって、プラスとマイナスの働きを利用したもので、水の流れにたとえると、充満した水を溢れさせないために、排水路に流してあげる目的で行なわれる治療法です。

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