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夜尿症治療の症例

はり灸は夜尿症の効果的な治療法です

夜尿症の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例:患者 女児 12歳

来院時の状態:
おねしょ:お腹は全体的に硬く、骨盤が狭い状態でした。
この患者さんは発育障害があり、小学校6年生でしたが、身長、体重とも小学校低学年くらいの大きさで、言葉もはっきりしない感じでした。
治療方針(証)
証は全身に気を行き渡らせ体を温める目的と水分調節の目的の治療方針(肺虚証)で、肘関節のところのつぼと膝関節の内側やや下のつぼに補法を行ないました。

腹部に散鍼(ちらしん)を行い、また背中にはりを行った後、お尻の骨付近に温かみを感じたら取り去る灸を行い、治療を終了しました。

週1から2回の治療を暫く続けて効果が少し出て来ましたが、完全には治まることにならなかったようでした。しかし1年後、再来院したときに聞いてみますとあれから夜尿症のほうは治まっているとのことでしたので、少しは手助けになったのではないかと思っています。


2例:患者 男児 13歳

来院時の状態:
おねしょ:生まれてから今までおねしょが止まった事はない。  

1ヶ月ほど前に病院で検査を受けるが以上はないといわれる。薬を飲んだら、副作用で尻がかぶれてしまった。腰痛もある。脈状は浮いていてやや速く弱い。腹が冷たく、足も冷たい。

治療方針(証):
証は全身の気を行き渡らせる目的と緊張を緩和させる目的の治療方針(肺虚肝実証)で左手首の外側のつぼと左足の親指の所にあるつぼに補法。右の足の親指と人差し指の間にあるつぼにはりを行ないました。その他、腹部、首周り、背中にはりを行った後、足の冷えに対して温かみを感じたら取り去る灸を行ないました。

最初は冬休みと言うこともあり、ほぼ毎日1週間治療を行なったところ、夜尿がない日も出てきましたが、学校が始まってから、来院の間隔があくようになったら、また夜尿が起こり始めて、途中で来院されなくなりました。

治療する立場から申しますと、せっかく治療効果があることがわかってもらえたのではないかと思っていたのですが、来院回数が減ったことで改善傾向にあった状態が、少し逆戻りする状態になり、はりは効かないと判断されてしまったのは非常に残念です。

13年間も止まったことが無い夜尿症は、数ヶ月は最低治療を続けてもらわないと治ってこないということを初めに説明をさせて頂いたのですが、それが理解されなかったものと思われます。

このサイトを見て来院してみようかと思われる方は、夜尿症は月単位での治療が必要であるということを念頭において来院されてください。


3例:患者 男児 9歳

来院時の状態:
毎日のように夜尿がある。腰の痒み。皮膚はざらつきかき壊している。脈状は沈んでいて硬い。
治療方針(証):
証は全身の気を行き渡らせる目的と緊張を緩和させる目的の治療方針(肺虚肝実証)を立て、治療を行ないました。左足親指にあるつぼにより娑法。腹部、背中にはりを行った後、下腹部のつぼに温かみを感じたら取り去る灸を行ないました。

土曜日にしか来院できないと言うことで1週間に1回の治療で行ない、3ヶ月目には夜尿症が止まりました。途中、年末年始でテレビを見ていたら、本人がショックを受けるシーンがあったらしくて、夜尿が頻繁になったそうです。

このように心意的なものが大きく作用しますので、親御さんもイライラせず、子供を叱るようなことはなさらないほうが治療効果を高めることになります。


4例:患者 女児 9歳

来院時の状態:
夜尿。今までの経過としては、生まれてからほぼ毎日夜尿がある。

昼間も間に合わなくて漏らしてしまう。医者を受診するが、治らない。膀胱型の夜尿症と診断されるが、反射には異状はないと言われているとのことでした。

そのほかの症状としては、眠りすぎる、時々湿疹が出来る、時々腹痛とのことでした。腹はやや硬くてとくに膀胱のあるところに弾力性がない。脈は浮いていて弱い。体の状態は背中の皮膚がざらついていて、時々かゆみがある。

治療方針(証):
治療としては、初めは1週間に2回程度来院してもらい、徐々に治療感覚を空けていくことにしました。1回目は、肺虚証という/証を立て、手足の経絡を円鍼というはりでなで、背中もてい鍼や円鍼という刺さないはりをもちいて行ないました。下腹部にあるちゅうきょくけつに温灸/左足小指のしいんけつにぎんりゅうという粒を貼りました。

2回目の来院に、治療後少し下痢気味となったといわれました。治療は1回目と同様に行ない、3回目から左足小指のぎんりゅうは自宅で貼ってもらうことにしました。

4回目頃より夜尿がない日があるようになり、7回目頃に又毎日夜尿がありましたが、お腹のぎんりゅうを、お尻側に変えてみました。

その都度、温灸やぎんりゅうの場所を換えましたが、昼間の尿の漏れることがなくなり、夜尿も1週間以上なくなってきましたので、1週間に1回の治療として継続し、10月末で良い状態になっていましたので、25回で完治といたしました。


5例:患者 女児 9歳

来院時の状態:
残尿感。今までの経過としては、最近おしっこが気にかかり我慢していたり、なかなかトイレから出られない。精神的に緊張しやすいとのことでした。  

この患者さんは夜尿ではありませんが、排尿障害ということでご紹介します。そのほかには症状はありませんでしたが、少し人見知りをするような感じのお子さんでした。

腹は下腹部が冷たい。脈を見ますと、沈んでいて弱い。体の状態は、皮膚にはざらつきはありませんが、手の平に汗をかいていて足は冷たい状態でした。

治療方針(証):
遠方からの通院でしたので、週1回の治療で継続してもらいました。

1回目は、肺虚肝実証という証を立て、手足の経絡を円鍼でなでました。後はてい鍼/円鍼で背中に、はりを行い、下腹部に温灸とぎんりゅうを貼りました。

3回目でトイレに行きたいという気持ちが少しずつ少なくなり、ぎんりゅう貼付は取りやめました。7回目で症状の改善が見られ、足の冷たい感じと手の汗が良くなっていましたので、11回で治療を終了といたしました。

一緒に来院されているおばあちゃんの話では、はりに来ると気持ちが落着いて、本当は週に2回くらいは来たいと行っているとのことでした。


6例:患者 男児 11歳

来院時の状態:
毎日のように夜尿があり、排尿そのものも近い様子でした。

既往症としては、小児喘息とアトピー性皮膚炎があるとのことでしたが、最近は治まっているそうです。

体格は身長が140センチ、体重が30キロくらいでした。皮膚の状態は背中にざらつきがあるものの、後は綺麗な肌をしていました。左のお尻の骨(膀胱兪)に圧痛がありました。お腹は硬めで特に膀胱部に弾力がありませんでした。

脈は浮いていてやや早めでした。そのほかは夢を多く見やすいとのことでした。

治療方針(証):
肺虚肝実証という証を立てて左手の太淵と言うつぼに、てい鍼を行い、右太衝というつぼに上から下へなでる瀉法を行いました。そのほかは円鍼で背中を上から下へ撫で、左の圧痛のあった膀胱兪と膀胱に関係のある中極と言うつぼに温灸をおこない治療を終わりました。

下腹の硬さと手足の冷たさがややありましたが、これが暖かく緩んでくれば、夜尿も治ると考え、そのように親御さんにも説明をさせて頂いて、週に2回くらいのペースで通っていただくことにしました。

経過としては、3回目までは夜尿が止まりませんでしたが、4回目には止まる日が出てくるようになり、自分でおきてトイレにいける夜も出てくるようになりました。途中鼻血が治療後あったということで、証を腎虚証に換えたり脾虚証という証に換えたりしながら、適宜、銀粒を貼りながら治療を続けてもらいました。

19回目でほとんどなくなりましたので、後は1週間に1回、2週間に1回という具合で経過観察をして頂き、26回4ヶ月で完治といたしました。


7例:患者 男児 12歳

来院時の状態:
夏になると夜尿が止まるがそれ以外は今までほとんど止まったことはない。オムツを外したこともない。皮膚は滑らかで手足に汗をかきやすい、風邪などを引くとぜんそくがある。そのほかには眠りすぎるとのことでした。  

脈は浮いていてやや速い。腹は下腹部が硬い。

治療方針(証):
肝虚脾実証という証を立て、左足の肝経・腎経に下から上に撫でる補法。右足の脾経を上から下に撫でる瀉法を行いました。腹部の硬いこりにたいしては普通の鍼を使って緩めるように刺鍼しました。後は背中を上から下になで、下腹部に温灸を行いました。

野球をやっているということで生来は活発なお子さんと思われますが、やや緊張しやすいタイプで治療のベッドに上がっていてもキョロキョロあちこちを見るようなしぐさが多く見受けられました。

鍼をすることによって緊張を取り除くと同時に落ち着かせることも大切であると考えて治療を進めていくことにしました。

経過としては、初回から治療の当日は夜尿がなくなり、初めは親御さんに起こされてトイレにいくような状態でしたが、徐々に自分でいけるようになりました。

証は脾虚肝実証とか、肺虚間実証で暫く治療を続け、途中、治療後熱を出してしまうなどの症状がありましたので、腎虚証に換えたりしながら行っていきました。

20回目で8日続けて夜尿がなくなってきたとのことでしたので、その後は経過観察として、週に1回の治療といたしました。31回、計6ヶ月で治療を終了としました。


8例:患者 男児 10歳

来院時の状態:
今まで夜尿があったが、最近は1週間に1から2回くらいに減っている。卵アレルギーがあるが、それ以外の症状はない。

腹は全体的に柔らかく、下腹部も弾力性がある。脈は浮いていて弱い。皮膚は背中にざらつきがあるが、後は綺麗である。

治療方針(証):
肺虚肝実証という証を立て、右手首の外側と右足の親指側を円鍼で撫でる補法。左足親指側のこうを上から下に撫でる瀉法を行った後、心中・命門というつぼに補方。背中を上から下へ撫でました。最後にお尻の骨にある膀胱兪に左右温灸を行いました。

1週間に2回くらい来院していただきたかったのですが、遠方ということもあり、1週間に1回の治療を続けてもらうことにしました。

3回目まで治療と治療との間に1回夜尿がありましたが、4回目から夜尿がなくなり、途中2日続けて夜尿がある日があったようですが、それ以後はまったくなくなりましたので、8回2ヶ月で完治といたしました。

この患者さんは来院した段階でかなり良い状態であり、鍼を3回くらいしただけで、1週間に1回はあった夜尿がなくなってきました。

このように数回の治療で完治することもありますので、ご参考までに紹介させていただきました。


用語説明:

証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
散鍼(ちらしん)
散鍼とは、皮膚や筋肉が突っ張っていたり、大きなこりがあるところにつぼに関わり無くはりをする方法です。

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