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慢性腰痛症の症例2

はり灸で慢性腰痛症・腰が痛い症状を改善

慢性腰痛症の症例をご紹介いたします。文字背景にピンク色がある用語は、本文末尾に簡単な用語説明を記載いたしておりますので必要に応じてご覧ください。


1例:患者 女性 36歳

来院時の状態:
右尻の痛み。この患者さんは平成14年12月に第5腰椎の椎間板ヘルニアのため、手術を受けています。その後、あまり芳しくなく他鍼灸院の鍼灸治療を受けていましたが、当院に来院されたものです。
身長が高くて痩せ型。脈は浮いていてはやく弱い。腹は大副(臍より上側)が弱い。
治療方針(証)
証は全身の気をめぐらすことと、体の緊張を緩和させる目的(肺虚肝実証)という治療方針で左の太淵/太白に補法。右対衝より瀉法。胆経/大腸経/膀胱経より瀉法。

腹/背中/腰に刺鍼。特に右の仙骨側のこうけつに対してそれを緩めるような刺鍼。腰椎の反応のある場所に知熱灸。このような治療を1週間に2から1回行ないました。

証は肺本証が多く、5回目以降は右の尻の痛みは治まってきましたが、本来左側に坐骨神経痛が出ていて、それがまた気にかかり始めましたので、適応側を右に換えて治療を行ないました。

1週間に1回の割合で、翌年の4月末まで治療を行ないました。


2例:患者 女性 76歳

来院時の状態:
両足が痺れる。この患者さんは病院で脊椎幹狭窄症と診断され、平成4年には腰椎の椎間板ヘルニアのため手術を受け、脳血栓/胆石/足の静脈瘤などの既往症がありました。一度腰を手術しているので、出来れば手術をしたくないということで来院されたものです。
脈は浮いていてやや遅く弱い。腹は全体的に力がない。足を触診すると、他の場所と比べて感じが分からないそうです。
治療方針(証):
証は全身の気を巡らすことと痛みの緩和を目的(肺/肝相剋調整)という治療方針で右たい淵/太白/左対衝に補法。大腸経/胆経より瀉法。腰部を中心に刺鍼。足に散鍼。腰部に温かみを感じたら取り去る灸を行ないました。

4回目くらいまで同じ治療を行ない、左の申脈/後谷にきけい灸を加えました。証は腎や脾などが本性になりました。1週間に2回から1回の割合で治療を行ない、11月ごろにはMRIを取ったら狭窄症が良くなっていると言われました。

症状はその都度、膝が痛くなったり、痺れが出たり、足が痙攣(けいれん)したりと様々でしたが、1年8ヶ月通院されました。


3例:患者 男性 64歳

来院時の状態:
左腰から足にかけての痛み。この患者さんは交通事故に遭い、変形性腰椎症と診断されている方で、痛みが常にあり、仕事が警備員ということもあって、歩くのが仕事というものでした。
病院では手術を勧められていましたが、契約社員であり、入院して仕事を休むと契約してもらえなくなるので、なんとかはりで治して欲しいとのことで来院されたものです。
脈はやや硬く浮いていました。腹は大腹が弱く小さい腹に押すと痛みを感じていました。皮膚はざらついていました。なんとか患者さんの期待に答えられるようにと気持ちを引き締めて治療にあたりました。
治療方針(証):
証は全身の気をめぐらすことと、体の緊張を緩和させる目的(肺虚肝実証)という治療方針で右太淵/太白に補法。左対衝より瀉法。大腸経/膀胱経より瀉法。腰部の左側から仙骨左側に刺鍼後腰部に温かみを感じたら取り去る灸を行ないました。

このような治療を1週間に1回から10日に1回の割合で行い、途中から左申脈/左後ろ谷に対してきけい灸を行ないました。

10数回あたりより、足の痛みが無くなり、仕事でも支障がないとのことでした。脈も硬さが取れ、皮膚にも艶が出てきました。3ヶ月で完治といたしました。

このように一般的には変形していたり、狭窄症と診断されているともう治らないとか、はりは効かないと思われている方が大多数だと思いますが、そのものが治らなくても症状に対しては、はりは有効であり、日常生活を支障なく送れるようになりますので、諦めずに通院してください。


用語説明:

証(あかし)
東洋鍼灸治療では、治療を進めるにあたり、証(あかし)を決定します。証とは、体のどのつぼに鍼やお灸をするのかを決定する、治療方針のことです。
散鍼(ちらしん)
散鍼とは、皮膚や筋肉が突っ張っていたり、大きなこりがあるところにつぼに関わり無くはりをする方法です。
きけい治療(灸)
経絡治療の中の一つの治療方法で手と足からそれぞれ一つずつ、つぼを選んで組み合わせ、鍼の材質や灸の数に差をつけることによって、プラスとマイナスの働きを利用したもので、水の流れにたとえると、充満した水を溢れさせないために、排水路に流してあげる目的で行なわれる治療法です。

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