経絡治療2-定義
経絡治療の定義
鍼灸のお話しの続きです。
先回までは鍼灸術全体のお話と、我々が行なっている経絡治療の由来と沿革についてお話を進めてまいりました。今回からはいよいよ経絡治療について本格的な内容をご紹介していきたいと思います。
皆さんに分かりやすくご紹介出来ればと思いますが、東洋医学は独特の考え方も存在するため、我々の日常生活や一般知識では容易に置き換えられない部分もあるかと思います。
分かりにくい部分はどうぞご了承の上、ご一読ください。さあ、5枚目の扉を開いてみてください。
経絡治療とは
「病態を気血の変動として統一的に観察し、全ての病変を経絡の虚実となし、その主たる変動経絡を主証として把握し、経穴をこれが診断と治療の場として鍼灸をもって補瀉(ほしゃ)調整し生命力の強化をはかる従証療法」と教科書では書いてあります。
これだけを読んでもさっぱり意味は分かりませんね。我々も経絡治療を勉強し始めたとき、あるいは、鍼灸学校の生徒さんに説明するときにこの定義からお話しすることにしていますが、これを説明するのが最も難しいことです。
まず、人間の体は気と血によって作られていると考えてください。
それを巡行させているのが、体全身を巡っている経絡というもので、それは、1本の線ではなく、お互いに絡み合って頭の天辺から手足の先まで、または、内臓の隅々まで通っていると想像してみてください。
その経絡の外側に気が流れ、中に血が流れています。その流れが順調であれば健康として、考えています。それが病気や体調不調によってバランスが崩れたときを病気と考えているのです。
その崩れたバランスを鍼やお灸をすることによって経絡の外内を流れている気血の通行を正常な状態にする鍼灸のやり方を経絡治療と呼んでいるのです。
足がとても冷たく冷えを感じていて、頭が重く肩がこるという人がいたとします。
これは、足のほうへ巡っていなければならない気血が、肩がこることによって上のほうでつまっていて手足の先まで充分降りてこないということで、気血の巡りが悪くなっている手足を暖める力がないということです。
ですから、足の冷えと肩凝りがセットになっていると考えてよいでしょう。その気血の巡りをよくするために手足のほうへ気を引き下ろすことと、もともとつまっている肩や頚の部の滞りを取ってあげることで、全身のバランスを調整することになります。
簡単にいえば、これが経絡治療なのです。
経絡治療では、その経絡を調整するために、つぼを用いますが、それはあくまでも気血の流れを整えるために使っているもので、筋肉をほぐすとか、痛みが出ている神経に刺激を与えて痛みを散らすという目的で行なっているのとは少し意味が異なります。
実際に患者さんとして、はりを受けられると、「私は腰痛を治してもらいたい」ということで、腰に鍼をすれば良いのではないかと思われると思いますが、腰に関係する経絡を調整するだけでは、腰痛は治ってこないため、手足のつぼを対象に鍼やお灸を行なうのです。
もう一つご理解していただきたいのは、経絡を調整するために行なわれる経絡治療は病名や症状にたいして行なわれるものではなく、どんな病名がついていようと、病院で異状はないと言われている症状であっても、治療が出来るということです。
それは、なんでも治るということではありませんが、この病気だから効果があるとか、難病だから効果がないという単純なものではないということです。
当然、直治るもの、何年もやっても治らないものもあります。しかし、人間が生きていて経絡現象があり、気血が存在している以上はわれわれ経絡治療では、全ての人が治療の対象となりうるということをご理解いただきたく思います。
次回は、調整する気血について書かせていただく予定です。