メニュー一覧

メニュー一覧をスキップして本文へ移動

ここから本文

証(あかし)決定のお話その2

治療方針を左右する証

今回からは、証を立てていく手順についてお話をしていきます。さあ、33枚目の扉を開けてみてください。

証決定は3段階に分けて進めていきます。第1段階として、施術の選択を行います。

ここでは、まず、病の証と体の証をあきらかにして、どのような手法を行うかを決定します。そのためには、病因・病症・脉状について考えます。

ぎっくり腰や風邪をひいて熱を出している患者さんの場合、外邪性の陽証として考えます。これは経絡的には陽経を犯して病は浅く表陽部にあり、体力もあるから、表す病状は激しいものが多く、実脉を表していますので、治療としては瀉法を中心に行うことになります。

これを、「陽実証」と呼んでいます。

太めの鍼を使用したり、時に「刺絡」と言って汚血を排出させる治療をします。

よく、患者さんで「鍼に行ってきたら、1回で治った」とか、「2、3回行ったら、もう出なくなった」などと言われる方がいらっしゃいますが、それは、我々治療家の技術レベルもありますが、おおよそは先ほど書きましたように、経絡的には浅い部分を犯していてまだ時間がそれほど立っていないので、症状を追い出す力が患者さんの体にあるということで、そのような結果になることが多いものです。

逆に、リウマチの患者さんや、慢性的な耳鳴り、体の冷えを表している患者さんの場合、内因性の久しい病で、陰経を犯し病は深く陰裏(体の中側)にあるので体力を消耗し、表す病状はぎゅくじゅくして緩慢なものが多く虚脉を表すことになります。これを「陰虚証」と呼んでいます。

治療としては、徹底的に補法を行うことになり、細い鍼を使用したり、てい鍼、円鍼という刺さない鍼を用いたり、一定時間刺して置く、置き鍼を行うことになります。

数回鍼にかかっても全く症状に好転の兆しがなかったり、効果が出た時でも、治療してから翌々日になってからよくなってきたとか、三日くらいたってから楽になってきたなどという患者さんは、生来の体力が落ちているため、症状を修復するだけの力が弱まっているため、このような経過をたどることになります。

けっして、鍼が体に影響を与えていないということではありませんので、誤解されないようにしてくださいね!

実際の治療では、このようにはっきりと実証とか、虚証などと区別出来る患者さんばかりではなく、複雑に症状が絡み合っていますので、それを更にはっきりさせるために、病体や症候を「新久」、「激易」、「緩急」、「虚実」の4方面から観察します。

(あ)新久とは

病が新しいか久しいかを見るもので、新しい病は比較的侵されている経絡も浅く1経か2経の治療で済むことが多いものです。久病は、長い間患っているため、病歴も複雑化しており関係している経絡も他経にわたっています。

(い)激易とは

病状が激しいか易しいかを見るもので、新しい病でも激しいものと易しいものがあり、久病でも、激しいものと易しいものがあります。

激しいものでは、生命の予後について判断を下し、命が危ないと見たときは、すぐ病院に行ってもらうことになります。

易しい病状でも、久しい病に対しては、その起こってきている原因や特徴を患者さんに理解してもらい、油断しないように説得します。

一見、易しいような病状を表していても癌腫、悪性高血圧症、結核などは、徐々に命を脅かしていくものもあるので、注意が必要となります。

(う)緩急とは

病の進行状態で、緩やかなるか、急なるかを見るもので、神経痛・リウマチ・癒着性疼痛などは、病状は激しくとも親交状態は緩やかでありますが、化膿性疾患や伝染病の中には、一見易しいような症状ながらその進行は極めて急激なものがありますので、注意しなければなりません。

(え)虚実とは

患者さんの体力と病症の関係を見るもので、体力が充実している人に激しく進行急な新しい病を起こしたばあいは瀉法を行います。

体が痩せ衰えている虚体の人に進行緩やかな久しい病がある場合は、徹底的に補法を行います。しかし、虚体に激しい急病が起きたり、実体がねんめんとして久しい病を表したりしていますので、適宜手法を工夫することになります。

そのほかに救急法をまず行わなければならない患者さんとしては、ねんざ、脱臼、骨折の正副、異物の除去、中毒症の吐瀉、難産や出血下血の止血法などは適切に行うか自分の手に負えない場合は病院に行かせるかどうかの判断が必要となります。

このように第1段階では、補法を中心に治療を進めるか、瀉法を中心に治療を進めるか、鍼は何をもちいるか、あるいは、救急法を施さなければならないかを決定するものであります。

今回はこの辺でお話を終わりとさせていただきます。

鍼灸まめ知識