臓症論のお話1
東洋医学における臓器の仕組みと働き
今回は臓症論という東洋医学における臓器の仕組みと働きにかけてのお話をさせていただきます。
東洋医学における臓腑は現代医学の内臓とは似ていて非なるものです。
本来、肝臓とか心臓という言葉は、東洋医学の言葉であったのですが、江戸時代に杉田玄白が解体新書を表したときにオランダ語を日本語に直す際、東洋医学の用語をそのまま用いたことで、このような混乱を招くことになりました。
そのときに別の日本語を当てていれば、我々の馴染みのある肝臓とか心臓という言葉とは違った言葉になっていたかもしれませんね。さあ。15枚目の扉を開けてみてください。
古代中国では、死者に対する尊敬の念から、これを解剖するなどということは、考えられなかったようですが、しかし、動物を料理したり機会あるごとに5臓6腑を観察して実物に近い図面が残されています。
これらはおおむねその働きより類推したものとされています。これに肝・心・脾・肺・腎・心包の6臓と、胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦の6腑があります。
次に、その位置と作用について説明します。
1.肺臓
背の第3胸椎付近につくと思われ、5臓の最上部にあり、その形は開いた蓮華の花のような形をしていて下に向かって所臓にかぶさっている。
その口を鼻に開いていて、天空より清い気を吸い込み、他臓の濁った気を吐き出している。これは、5臓に生気を巡らす鞴の役目をしていると考えられる。
鼻、皮膚、息遣いに関係し皮膚との関係も深いとされていて、これらの症状は東洋医学では肺の病と見ることが出来る。
2.肝臓
背の第9胸椎付近につき、心臓とともに血に深く関係し血を蔵するところとされている。
眼、筋肉、爪に関係し、胆とともに意志の働きを支配しているので、弱ればくよくよし、高ぶれば怒り叫ぶ。又腎臓とともに生殖作用に関係があるとされているので、これらの症状は肝臓の病と見ることが出来る。
3.胆
背の第10胸椎付近につき、苦いせい汁を入れる嚢とされている。肝と陰陽関係にあり、強い意思と決断力を持ち、弱れば体がよろめき、高ぶれば痛みを発する。
4.心臓
背の第5胸椎付近につき、神を蔵するところとなっている。
5感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・皮膚感覚)および意識活動を司る中枢的な存在であり、これを君火といい生命の根源とみなされている。
その働きは先天の元気を蔵する腎の気すなわち生気によって補償されるのでこれを合わせて生神というのである。
又舌・血脉・体毛を司り、血を造るところとされているので、これらの症状は心臓の病と見ることが出来る。
5.心包
背の第4胸椎付近につき、心臓を包む膜である。これは君火である心臓に代わって他臓の支配を司るので相火と呼ばれている。
6.三焦
後ろは第1腰椎付近につき、前は上焦中焦下焦に別れ栄衛の循環精製排泄の系統となっている。上焦とは横隔膜より上をいい、その作用は栄衛の循環を司る。
中焦とは横隔膜以下臍までをいい、その作用は栄衛の精製吸収を司る。下焦とは臍以下をいい、その作用は、残りかすの排泄を司る。
栄衛の循環としては、中焦胃の腑において精製された栄は下焦において訓上された衛と合して栄衛となるが、更に腎の臓より先天の元気を受けて上焦にいたり、心臓によって血となり肺より吸収された天空の気と合して三焦の元気となって経絡に従い5体に運行し生命活動を営んでいるのである。
その支配は君火の命を受けて心包が行なっていることになる。人体における中枢的な精神作用や意識活動は君主自らこれを行なうが、5臓6腑や5体の働きはその支配を宰相である心包に任せるというのである。
これは、古代中国の政治の仕組みを5臓6腑の働きに当てはめた考え方と思われる。
今回はこの辺でお話を終わりとさせていただきます。