五臓の色対表のお話
東洋医学の五つのカテゴリー
今回からは少し体に関係する話をさせていただきます。
以前、陰陽と五行が東洋医学の基本理論であるとお話しさせていただきました。東洋哲学における自然界は、動いて天が生じ、静まって地が生じ、その間に人が存在するという「天地人」合一思想が根本にあります。そして、全ての万物は木火土金水の五つで構成されていると考えられています。
我々人体もこの思想が反映され小宇宙として考えられているのです。従って、体の仕組みや働きを全てこの五つのカテゴリーに当てはめたものが五臓の色対表ということになります。
古来中国のこのような思想を反映させ、そこから考え出された見方ですので、なんども言いますが、現代の我々には容易に理解できるものでもなく、理論的にも合わないところが多くあることを、予めお断りしておきます。
さあ、17枚目の扉を開けてみてください。
ここでは、この五臓の色対表を1基礎部門、2病因部門、3病症部門、4養生法その他の4部門に分けてご紹介します。
1.基礎部門は五行・五臓・五腑・五記・五募の5項目
五行(ごぎょう) | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
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五臓(ごぞう) | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五府(ごふ) | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
五起(ごき) | 井(せい) | 栄(えい) | 兪(ゆ) | 経(けい) | 合(ごう) |
五募(ごぼ) | 兪(ゆ) | 経(けい) | 合(ごう) | 井(せい) | 栄(えい) |
基礎部門の補足説明
- 五行の木から水は、五行の性質と抽象をあらわす
- 五臓は心包(絡)を加えて六臓と呼ぶこともある
- 五腑に三焦を加えて六腑となる。三焦に対するものは心包である
2.病因部門は五精から五支までの11項目
五精(ごせい) | 魂 | 神(しん) | 意知(いち) | 魄(はく) | 精志(せいし) |
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五情(ごじょう) | 仁(じん) | 礼(れい) | 信(しん) | 儀(ぎ) | 智(ち) |
五音 | 角(かく) | 徴(ち) | 宮(きゅう) | 商(しょう) | 羽(う) |
五畜 | 鶏 | 羊 | 牛 | 馬 | 豚 |
五季(ごき) | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 |
五刻(ごこく) | 朝 | 昼 | 午 | 夕 | 夜 |
五方(ごほう) | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 |
五悪(ごあく) | 風(かぜ) | 暑(あつさ) | 飲食労倦 | 寒(冷え) | 湿(湿り) |
五根(ごこん) | 眼(がん) | 舌(ぜつ) | 唇(しん) | 鼻(び) | 耳(じ) |
五主(ごしゅ) | 筋(きん) | 脉(血脈) | 肌(肌肉) | 皮(ひふ) | 骨(こつ) |
五支(ごし) | 爪(そう) | 毛(皮膚の毛) | 乳(にゅう) | 息(そく) | 髪(はつ) |
病因部門の補足説明
- 五精は精神の所属。神は心に属す
- 五音は音階の専門的用語
- 五畜は五臓の食物や薬用になる動物
- 五季は季節・五刻は時刻・五方(ごほう)は方位
- 五悪は五臓のきらう外気の性状
- 五根は五臓から栄養を補充するもの
- 五主は五臓から栄養を補充するところ
- 五支は精気が発するところ
3.病症部門は五役から五変の7項目
五役(ごやく) | 色(しき) | 臭(しゅう) | 味(み) | 声(せい) | 液(えき) |
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五色(ごしき) | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
五香(ごこう) | 炒(油臭し) | 焦(こげ臭し) | 芳(かんばしい) | 生(なま臭い) | 腐(くされ臭い) |
五声(ごせい) | 呼(よぶ) | 言(いう) | 歌(うたう) | 哭(悲しみ泣く) | 呻(うめく) |
五液(ごえき) | 泣(なみだ) | 汗(あせ) | 涎(よだれ) | 涕(鼻汁) | 唾(つば) |
五志(ごし) | 怒(いかり) | 喜(よろこび) | 思(おもい) | 憂(うれう) | 驚(おどろく) |
五変(ごへん) | 握(にぎる) | 言(しゃべる) | 噦(しゃっくり) | 咳(せき) | 震(ふるえ) |
病症部門の補足説明
- 五役は五臓の主なる役割、表現
- 五色は顕れる色、病気の色を表す、各病人の皮色を診て診寮に用いる
- 五香は病人や病室の特有のにおい
- 五声は病人の出す声色や音のこと
- 五液は体の分泌液のこと。過不足はその病症
- 五志は感情表現、過ぎれば内傷をおこす
- 五変は病気の特徴,動きの表現
4.養生法その他
五果(ごか) | 李(すもも) | 杏(あんず) | 棗(なつめ) | 桃(もも) | 栗(くり) |
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五菜(ごさい) | 韮(にら) | 薤(らっきょう) | 葵(あおい) | 葱(ねぎ) | 藿(もやし) |
五穀(ごこく) | 麦(むぎ) | 黍(きび) | 粟(あわ) | 米(こめ) | 豆(まめ) |
生数 | 三 | 二 | 五 | 四 | 一 |
成数 | 八 | 七 | 十 | 九 | 六 |
五兄弟(ごえと) | 甲(きのえ) 乙(きのと) |
丙(ひのえ) 丁(ひのと) |
戊(つちのえ) 己(つちのと) |
庚(かのえ) 申(かのと) |
壬(みずのえ) 癸(みずのと) |
養生法その他の補足説明
- 五果は食物や薬用になる果実
- 五菜は食物や薬用になる野菜
- 五穀は食物や薬用になる穀物
- 生数は五行発生の数理原理
- 成数は生数に地の数五を加えると成数となる
- 五兄弟は干支のこと、10の干支で表現
以上が五臓の色対表でありますが、これを患者さんの症状や体を診察した際に応用し、我々は鍼治療を進めていくことになります。
たとえば、五根の眼・舌・唇・鼻・耳を最初の五行に当てはめますと、木・火・土・金・水となり、五臓では肝・心・脾・肺・腎となります。もし肝木経に変動を起こしやすい人は、眼の病をわずらいやすく、心火経の人は舌がこわばる病、脾土経は消化器をわずらい口唇が荒れる、肺金経は鼻の病、腎水経は耳の病をわずらいやすいということになります。
更に、五主の筋・脉・肉・皮・骨、五支の爪・毛・乳・息・髪についてみますと、肝木の人は筋ひきつり爪に変化を表し、心火は、血脉どうじて皮膚に産毛が多く、脾土は肌肉や乳房に、肺金は皮膚息遣いに、腎水は骨や髪の毛に、それぞれ病変を起こしやすいということになります。
このように五つのカテゴリーに分けてそれを組み合わせて考えていくと、おもしろくもあり、我々治療家としては頭を悩ませる複雑なものもあります。皆さんは何に当てはまりますか?
それでは、今回はこの辺でお話を終わりとさせていただきます。