病症論のお話-その2
細かい症状も分けて考えるの?
今回も病症論の続きをお話させていただきます。さあ、20枚目の扉を開けてみてください。
各症候と虚実
- 体の虚実
- 実体-皮膚と筋肉に適当につやと張りがあり、形が整い温かみがある人。
虚体-皮膚と筋肉につやがなく軟弱で形が整わず冷えている人。 - 経絡別症候
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- 風邪により肝が変動すると、めまい、筋引の引きつり、心下満などの症状が現れます。
- 暑邪により心に変動があると、発熱、咽喉、乾くなどの症状が現れます。
- 飲食労健の邪により脾に変動があると体重く節痛み食欲不振嘔吐、下痢などの症状が現れます。
- 寒さの邪により肺に変動があると、咳燥、肩凝り、気虚などの症状が現れます。
- 湿邪により腎に変動があると、足腰の冷え、逆気し餓えて食を欲せず、慢性のむくみがでてしまうなどの症状が現れます。
症状の性質による虚実
- 痛み
- 痛みそのものは実と見ますが、赤くはれて熱を伴い、冷やすと心地よく、押して不快なものは実痛となり、痩せ痺れを伴い、暖めたり撫でさすると心地よいものは虚痛となります。
- 下痢
- 急性胃腸炎や食あたりなどの下痢のように発熱、疼痛を伴うものは実となり、腸結核や慢性固執に現れて、微熱を伴い、しぶるものは虚となります。
- 汗
- 風邪や肺炎などの汗は実となり、自汗寝汗などは虚となります。この他、けいれん、嘔吐、咳燥、腫脹、発赤などはおおむね実に属し、痩せ、痺れ、痒みない、切れ喘息、不眠などは虚に属する症候となります。
身体各部の病症
- 耳・眼・鼻・口・舌
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- 耳の外口は腎であり、経絡として胆経三焦経小腸経が巡っています。
- 眼の外口は肝でありますが、肝経腎経肺経心経脾経などが巡っています。
- 鼻は肺の外口でありますが、心経大腸経などが巡っています。
- 口は脾の外口でありますが、脾経胃経などが巡っています。
- 舌は心の外口でありますが、心経肝経などが巡っています。
- 頭
- 頭は陽であり、冷やすと心地よいところです。経絡としては、頭頂部は徳脈経膀胱経、側頭部は胆経小腸経三焦経胃経、内部は肝経心経がそれぞれ巡っています。
ちなみに頭痛を血頭痛と深頭痛とに分けています。深頭痛は脳膜炎尿毒症くも膜下出血などの重傷な病気で起こると考えています。
- 顔面
- 常に露出しているところで陽に属し、胃経大腸経が巡っています。
- 咽喉
- 咽喉は脾経腎経心経大腸経などが巡っています。
- 肩
- 肩は全ての経絡が経過しているところで肩凝りではよく触診して属する経絡を択ぶことになりますが、主として肺経がかかわります。
- 胸・乳
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- 胸は心経肺経が巡っています。
- 乳は、脾系胃経が巡っています。
- 腹・背腰
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- 腹は脾経胃経が巡っています。
- 背腰の部には膀胱慶賀巡っていますが、この経絡の経穴に全ての12経絡にかかわる癒穴という重要な穴があり、治療点として大変重要です。
- 陰部
- 陰部は任脈徳脈肝経などが巡っています。
- 手足
- 手足は経絡の始まるところ、終わるところでありますから、全ての症状の治療点となり、経絡調整を計るのに適している場所になります。
この他、皮膚は肺経大腸経が司り、筋肉は肝経脾経が司り、髪の毛は腎経が司り、爪は肝経が司っています。
このように、鍼灸治療では、それぞれ所属する経絡を考え現す症候を陰陽虚実に分けて観察し、治療に繋げています。
今回は経絡の名前を羅列するだけで、皆さんにはあまりおもしろくなかったかもしれませんが、全ての症状を経絡として捕えて治療の手がかりにしているのだということをご理解いただくためにお話しをさせていただきました。今回はこの辺で終わりとします。