病症論のお話-その3
症状を経絡に当てはめるとどこの病気か分かるの?
今回も病症論の続きをお話させていただきます。皆さんにとってはあまり鍼灸の興味をそそるものではないかもしれませんが、皆さんが現している症状を東洋医学の治療家はどのように見ているかということを感じ取ってもらいたいと思います。
尚、本文中に「虚する」「実する」という言葉が出てきますが、前回のまめ知識「病症論のお話-その2」で考え方や症状について解説をしていますので、あわせてご覧ください。
さあ、21枚目の扉を開けてみてください。
12経絡の病症
経脈とか絡脈を合わせて経絡(けいらく)と言っていますが、これには12の系統があり、気血を通じて体を支配しています。つまり、全身の栄養、生殖、疲労回復、病気予防など、生命活動を全てコントロールしています。
この12本の経絡に、肺経・大腸経・胃経・脾経・心経・小腸経・膀胱経・腎経・心包経・三焦経・胆経・肝経があり、この順番で気血を循環させ生命活動を維持しています。この12経絡の変動で現れるとされている症状をご説明します。
- 1.肺経
- 肺経は肺及び気管、咽喉部など、呼吸器病や神経症による病として多く現れ「気」に属する病を起こし、皮膚病もこの経に関係します。 症状としては、
- 咳が出る、胸苦しい、肩凝り、のぼせ
- 肩からくび前面、上腕、前腕にかけての痛み痺れや運動機能不全を起こす
- 尿の回数が悪くなると失禁するなど
- 2.大腸経
- 大腸経は鼻、歯、咽喉などを巡っているので耳鼻咽喉の病を起こし、又、便秘下痢などもこの経が司ります。肺経とともに皮膚病、出来物に関係します。
症状としては、- 側頚部、上腕、前腕の外側の脹れ痛み
- 寒さでからだや声がふるえるなど
- 3.胃経
- 胃経は頭部及び顔面部、胸腹部、腸胃など頭、顔面及び躯幹部疾患の病症として現れます。 この経が虚すると、寒さでからだや声がふるえ、からだが冷えて消化不良となって腹が張ります。 逆に実すると、体の前面が熱くて消化亢進し、食の感覚が鈍くなり、常識では考えられないものまで食べても平気となります。 症状としては、
- 鼻の病、顔面、痛歯、痛扁桃炎、乳張れ、心下痛
- 大腿部、膝関節、下腿前面、足の先まで張れ痛む
- 欝症を発し進めば躁症となり走りわめくなど
- 4.脾経
- 主として胃腸などの消化器病はこの脾経に属し、また東洋医学では心の病は脾虚証としてとらえてます。脾経は心臓をまとい舌に終わっているので、胸切れ、みぞおち辺りが差し込むように痛む、舌こわばり、むくみなどの病を起こします。また、指が脹れて第一指が使えない急性リウマチは多くこの経に属します。 症状としては、
- 体が重い、関節の痛み、疲れやすい
- 食事が進まず、みぞおち辺りにつかえて吐く
- あるいはあくびが出て不快となるが、放屁、便通あれば楽になる
- 腹痛、接写、便秘、黄疸、尿平など
- 5.心経
- 心経は心及び精神方面の病として現れます。東洋医学では心は多臓を統轄すると考えられ、ここに変動があると、意識や間隔症を起こすとされています。 症状としては、
- 発熱、咽喉渇き、心痛する
- 胸の脇、上腕前腕の内側が痛んで手の平が熱する
- 6.小腸経
- 小腸経は後頭部及び目、耳、肩胛部の病として現れます。小腸は固形物と水分を分けることを司るので、利尿に関係し、便秘、下痢などの病を起こします。 症状としては、
- 顎項、頚、肩、肘、前腕の内側など折れるかと思うほどの激しい痛みを感じる
- 7.膀胱経
- 膀胱経は頭頂部及び腰背部、肛門又便秘利尿の病に関係します。外邪(外から侵襲した邪気のこと)を受けると頭項、肩、背、腰足の後面第5指に及んでこわばり激痛を発します。 症状としては、
- 虚するときはこれらの部が凝り疲れて、冷え、しびれ、虚痛する
- 鼻水、鼻血、涙が出て、きょうてん、痔の病、マラリアなどを発する
- 8.腎経
- 腎経は腎及び泌尿、骨、生殖系統の病として現れます。腎は生命の根源を蔵し、生殖利尿を司ります。その病は、逆気して漏らします。 症状としては、
- 空腹なのに食欲がない、からだの表面が黒い
- 息遣いが荒い、唾を吐くと血が混じる
- 立ちくらみ、咽喉痛み、口渇き、心脅かされる
- 慢性下痢または便秘、むくみ、心下痛、黄疸、出血、眠たくなる
- 痩せて足裏が熱して痛む
- 9.心包経
- 心包経は心及び心嚢など胸部疾患、精神方面の病として現れます。心包経は、肺臓と心臓の調節を行っています。 症状としては、
- 胸が苦しくなりもだえる、心痛など胸、肺が痛む
- 呼吸が速くなり、不安感がある
- 顔が赤くみだりに笑い、眼が黄ばむ
- 前腕と肘が痛み、手の中が熱する
- 10.三焦経
- 三焦経は側頭部及び耳、季肋部の病として現れます。 症状としては、
- 耳塞がり、耳鳴、耳漏する
- 眼の脇が痛み、咽喉脹れるなどする
- 妊娠骨盤の病を発する
- 11.胆経
- 胆経は側頭部及び季肋部、肝胆の病として現れます。 症状としては、
- マラリアのように寒熱があり、眼の脇や頚脇の下が脹れ痛む
- 口が苦くなり、ため息が出る
- 体の脇が痛くなり、寝返りができなくなる
- 病が進むと、からだの表面が赤づき光沢なく、くよくよしてよろめく
- 12.肝経
- 肝は内分泌器管の代表および筋や眼を司ります。肝経は肝及び泌尿、男女生殖器病や梅毒に関する皮膚病を起こします。 症状としては、
- めまい、胸、あばら、みぞおち辺りがつかえるような症状や胸がいっぱいで嘔気がする
- 激しい腰痛、神経症、リウマチなど
- からだの表面が赤づき、皮膚につやがない
- 下痢、脱腸、尿平、失禁する
以上がおおよその12経絡の変動で現れるとされている症状ですが、下痢とか便秘とか利尿とか、そのほかの症状も、何経にも同じような症状が重なっていて、臨床的には弁別しにくいものであります。
皆さんがこれを読まれて自分の症状にどの経絡が当てはまるか考えてもらうのは、いっこうに構いませんが、これはあくまでも古典に基づく12経絡病症ということになりますので、自分は肝臓が悪いとか心臓が悪くなっているのではないかなどと、自己診断しないようにしてください。今回はこれで終わりとさせていただきます。