東洋はりの診察方法4-脉診のお話その2
実際の脉診について
今回は実際の脉診についてお話してみたいと思います。さあ、26枚目の扉を開けてみてください。
脉診の寸法
東洋医学においては、人間の手首の間接から肘の関節までを1尺として、それを10等分したものを1寸としています。このような測定法を「どうしんすんぽう」と言って、東洋医学独特の計り方をしています。
つまり、大きな男性の腕の長さも、女性の腕の長さも、子供の腕の長さも、皆1尺としていて、穴を表現するときでも、1寸上とか2寸下などと言い表します。しかし、現実には身長や体格によって長さは異なっていることになりますが、便利な表記の仕方ともいえるのかも知れませんね。
この手首の方から2寸の所を脉どころとします。手首の関節の1部を除いた1寸9分を脉どころとします。それを先程の寸関尺三つに分けて、肘関節の方から尺分は7分、患部は6分、寸分は6分という長さになります。
人の手の長さによって、実際には脉どころの長さも違ってきますので、指を詰めたり、広げたりしながら、脈診をしています。
赤ちゃんの脉はどう見るの?
赤ちゃんの脉は、術者の指の1本、もしくは、2本当ててみますが、その当てた指の感覚として、寸・関・尺に分けて脉診することになります。
しかし、実際にはその微妙な差を捉えることは難しいものです。大きく考えて、右手の脉の強さと左の脉の強さを比較して、脉診をしています。
比較脉診
経絡治療における診断とは、望・聞・問・切によって集められた情報を、各経絡に配当し、比較脉診によって最終的にその主たる経絡を決定するものであります。
比較脉診の理論構成としては、難経六十九難に「虚すればその母を補い、実すればその子を瀉す。まさに、補って後これを瀉すべし」とあります。
この六十九難から、六部定位脉診の基本脉診を当てはめますと、「虚すればその母を補え」とありますので、脉診上、虚経が二つ並んでいるときには、その子が治療目標になります。 次に、「実すればその子を瀉す」とありますので、実系が二つ並んでいるときには、その母にあたる経を治療目標とします。
肺虚証を例にとりますと、脉診上では、肺経、脾経が虚している場合が肺虚証ということになり、肺経の働きを助けるために、肺経と母の経である脾経を補うことになります。
逆に、脉診上で、肝経、心経が実している場合には、肝実証ということになり、肝経の実を抑えるために、肝経とその子の心経を治療目標にして瀉すことになります。
しかし、これは理論上のことで、実際にわれわれがはりをするときには、このような経絡を目標に行っていくとは限りません。
さらに、経絡治療では、陰を重要視していて、補うことを第1の目標にしていますので、「補って後これを瀉すべし」とありますので、虚しているところが、主証としています。
以上、比較脉診をするということは、直ちに証を立てて主証を決定するということになり、その証によって引き続き治療目標(はりをする場所)が決まりますので、診断法の一つでもあり、治療の一部ともなっているわけです。
皆さんには、はりを知っていただく参考にはあまりならないかもしれませんが、はりとしての診断の進め方や治療の進め方を追っていただきたく思い、ご紹介いたしました。