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証(あかし)決定のお話その1

東洋医学の特色「随証療法」

今回からは、証決定のお話をさせていただきます。さあ、32枚目の扉を開けてみてください。

先回までお話ししてきた、望・聞・問・切・脉診と診察行為を行って、それに基づいて証を立てることを「証決定」と呼んでいます。

導き出された主証は直ちに治療に発展するものですが、こうした診断と治療の形式を「随証療法」と言って、東洋医学の特色となっています。

これは診断即治療で、証とは、単なる症状の羅列ではなく、特定の症候群につけられる呼び名でもありません。いろいろな病名を持つ患者さんの症候群を経絡理論に基づいて弁別し、抽出するという行為が加えられたのち、最後に決定されたものを主証と呼んでいます。

この主証は「腎虚証」とか、「肺虚肝実証」などという形式で表現されますが、これは直ちに「腎経を補え」とか、「肺経を補って、肝経を瀉せ」などと具体的にこの治療方針が支持されることになります。

しかし、この主証に基づいて実際に治療するためには、なに経の、なに穴に、どのような施術をするか、用いる器具の選択はどうするかなど考えたうえで、治療が進められていきます。証決定は、これらのことをすべて含めて行うことをいいますので、大きく3段階に分けて行っていきます。

その前に、患者さんの状態から、われわれ治療家の技術力も含めて、「治るか治らないか」や、「どのくらい治療を通っていただけばよいか」などを、予め予測する必要があります。これを「予後判定」と呼んでいます。

鍼灸院に来院される患者さんの多くは、「医療を受けていて、薬を服用しているが、なかなかよくなってこない」とか、単なる疲労回復のために来院される人が大半ということになります。
あらゆる治療を受けたが、すべては期待はずれに終わり、最後に鍼灸術に救いを求めて、溺れる者がわらにでもすがるような心境で来院される方もいらっしゃいます。

こうした患者さんの中には、すでに「命絶の証」を表し、いかなる医療をもってしても、救いがたいものもあります。

東洋医学では、これらの予後を判定する方法として、「しきけんめんぷの図」という死相判定法があり、5色にも生色死色があります。
また、聞診にも声に力なく、はりなく整わないものを悪としています。匂いにおいても、相剋する匂いが混ざったものを死臭としています。

脉診においては胃の気がない死脉や、腎肝の動機、きょりの動などより、治療可能か不可能化の判断をしています。最も気を付けなければならないものに、急性の腹症があり、命にもかかわりますので、慎重に腹心することが大切ということになります。

このような、状況の人を取り扱うということは実際には、百に一つもありませんが、どんな症状であっても病気であっても、来院された段階で、われわれ治療家は「予後」を判定していることになります。

私の治療院では、初診の段階で予後判定をすることはもちろんですが、問い合わせの電話での段階で、症状を尋ね、どのような状態なのか、いつから悪いのかを、必ず尋ねるようにしています。それにしたがって、通院の仕方や、どのくらいはりにかかってもらうかの状況を、予め予測して、患者さんに伝えております。

患者さんの通院の仕方で、治療が成功するか、治らないかが決まってきますので、何回くらい治療すればよいのか、どのくらいの間隔で通院する必要があるのかなど、患者さんの皆さんも、それを踏まえた上で、いらっしゃってくださいね。

今回はこの辺でお話を終わりとさせていただきます。

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